どこかで本の内容を見かけて興味深かったので購入してサクッと読了。
ここ最近、開発に関わらず全体のビジョンが必要だと思うことが多々あり、そういった意味でも自分の考え方を補強するような内容だった。
自分自身、アジャイル開発の信奉者という側面があって、短いイテレーションで必要なものを必要なだけ作るという点になんの異論はないのだけど、世にやれているスクラムでの開発などに参加していると、実はその場その場の局所最適解に陥っていてプロダクトとしては全く嬉しいものになっていないのではないか、と感じることがあるのだ。
往々にしてそういった場面で足りてないと思うのが、全体的な見通しというか、もっと洒落た言葉で書くのであれば「ビジョン」になるのかもしれない。
そういった面で、本書はイテレーティブなアプローチのみでは方向性が定まらないという問題にたいして、必要なのは「ビジョン」であるということを主張している本である。
おそらく本書で主張している内容はそれほど目新しいものではないと思う。第2章のプロダクト病についてはよく言われる話ではあるし、第7章における文化の話、いわゆる心理的安全性や燃え尽き症候群に至るような消耗の話はこれまででも記述され問われてきたものだと思う。ただこれらの内容をまとめてソフトウェアサービスを作っていくに際してまとめて知るために最適な本はなかったように感じる。
強いて目新しい部分をというならば、第3部の内容は面白かった。ソフトウェアサービスの社会的意義という点や倫理という面をしっかりと書き記しているのは大事だと思うし、この論点については自分も同意できる。
そういえば久々にfukabori.fmのテスト駆動開発とは何かの回を聴いて、テスト駆動開発のRED/GREEN/REFACTRORINGの前にそのコードで達成したいと思っているそのときのテストリストが必要である、という話がなされていた。
自分の解釈で言い換えると、そのときのテストリストとは目的や方針というニュアンスになるのかなと思うが、これはまさしくビジョンなのではないかと思う。