徹底というほど徹底していない、ちょっとは努力したレビュー 『放課後ティータイムII』 Studio Mix編

ギターを弾きたくなるアルバムはいいアルバムだ

 ここ最近、通勤時間にヘビーローテーション化しているアルバムがある。


 「放課後ティータイムII」だ。


TVアニメ「けいおん! ! 」劇中歌集 放課後ティータイム II(通常盤)

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 元々音楽聴くのは好きなので、洋楽・邦楽、ゲームミュージックやJazz聴いたりと、無差別に手を出しているほうだし、前作の「放課後ティータイム」も非常に好きなミニアルバムだ。


 ただ、今回の「放課後ティータイムII」はすごい
 まずアルバムとしての完成度がすごい。1枚目のStudioMixの構成、各楽曲の質、歌、演奏どれも鳥肌もの。2枚目のCassettleMixの手作り感と、必要最低限の音しかないしかし鋭い切れ味を持ったバンドの音。この感覚はここ最近買ったものではなかなか味わうことの出来なかった感覚だ。
 そして、アルバム単位で繰り返し聴いても全く飽きない。おそらく基本的に同じ歌い手が続かない、曲調も違うことが要因だと思う。StudioMixの前半なんか唯→澪→紬→澪→唯ときれいに並び、後半もごりごりのRock・シャッフル・バラードと多彩な曲で構成されている。おかげで、アルバム一度に3周するぐらいはざらになってしまった。
 

 そのために、この「放課後ティータイムII」以外にリッピングしたCDやiTunes Store、Amazon MP3で購入した曲がたくさんあるというのにまだ全部聴けていないという始末。でも、どうしても「放課後ティータイムII」を聴きたくなる。


 ということで、多少でもその気持ちの高ぶりを抑えておくため、レビューを書いてみようと思う。まずはStudioMix編ということで、CassetteMix編は別の機会に書こう。イカ…じゃない、下記前提条件のもとレビューを読んでいってもらいたい。

  • 唯のギター(主に左チャンネル)、梓のギター(主に右チャンネル)と想定(CassetteMixから類推)
  • 演奏者の中の人は考えてないよ!
  • ギターフレーズやコード進行の耳コピを所々でしつつ書いたが、間違っている可能性あり

いちごパフェが止まらない

 開幕一番にふさわしい一曲。終始唯の歌声とギターがバンドを引っ張っていく。
 サウンドのキモになるのは、ギター2本。イントロのツインリードといい、Aメロのカッティング非常に気持ちいい。そのAメロでの左チャンネルの唯のギターがダウンピッキングでざくっと弾いているところに、右チャンネルの梓がハンマリングを入れたカッティング。これでリズムが単調なものではなく、なかなか凝った感じになっている。。
 サビの部分は唯が屋台骨を作り、梓のオブリガートがその上に乗って世界を広げる。この2人のコンビネーションはさすが。今回のアルバムでは唯と梓のギターコンビネーションがかなりの部分を占めていて、バンドとしての成熟を感じますね。


 もちろん、リズム隊とキーボードの仕事はいい。特に唯のギターソロに入るまでの盛り上げ方がすばらしい。ギターソロも空を駆け上がるようなすばらしいものだけど、それまでのブレイクが上手く助走を付けて、離陸させている。
 後、Aメロの律のドラムがもう、どんだけ手練れなんだといいたいw


 唯の歌声も気持ちいいねぇ。サビの高揚感は澪ではなかなか出せない、突き抜けた魅力が溢れている。

ぴゅあぴゅあはーと

 さって名曲がやってきましたよ。
 お茶会での演奏は記憶に残るものであったが、スタジオ録音もいい。


 1曲目が女子高生の勢いをそのまま乗せた音とすれば、こちらはは全体的に抑えた演奏。しかしサビで一気に開放させるアレンジはなんとも気持ちいい。澪の伸びるような歌声が響く。


 聴き所は澪のベースとむぎのピアノ。
 ベースプレイの弾むようなプレイと、ところどころグリッサンドで低音から高音部分へぐいぐいっと引っ張るところがこの曲の心地よい浮遊感を支えています。いやはやこんなベース弾きながら歌うとか恐ろしい女子高生だわ。
 むぎのピアノはというと、イントロで曲を先導し、Aメロに入るとともに脇を締める役に。そしてところどころおいしいところをもっていく。なんとまあツボを押さえた演奏。


 右チャンネル、梓が終始奏でるカッティングも演奏に厚みを与えています。これがなかったらこの曲は大分寂しいものになっていることでしょう。

Honey Sweet Tea Time

 初のむぎ単独歌唱楽曲。元々合唱部入部希望の声が光る一品。

 
 曲の構成を聴いていると、バンド全体がむぎの歌声を全面に押し出すような演奏をしているなぁと思います。
 特にそれを感じるのは「蜂蜜色の……」で始まるAメロ。リズム隊が「タンタンタンタン」と4拍のリズムを打ち、むぎのピアノと歌がメロディを奏でる。次に入ってくる唯のギターもミュートでリズムをきざむ。この部分は明確に音程の変化があるのはむぎだけなんですよね。
 この満を持してむぎ登場という感じが、まあなんともメンバーに愛されている具合を見て取れてしまいますね。

 
 間奏部分のギターも聞きもの。単純に唯:リードギター、梓:リズムギターに止まらない、もっと複雑な絡み合いを感じます。


 しかし、澪の作ったこの歌詞はむぎをよくとらえているなぁ。

五月雨20ラブ

 渋いベースラインとタイトなドラムから始まる、これまでに見られなかった曲。歌詞からして、それまでになかった「はかなさ」を感じる。


 やっぱりこの曲のメインは澪、ということになるでしょう。ボーカルだけでなく、ベースが曲の根幹になっている。ギターとかキーボードに比べると、ベースラインが動きまくる。HSTTといいこの曲といい、構成として全面に押し出す楽器がボーカルをとっているものの楽器というのがなかなか面白い。


 そして、鬱憤を晴らすかのように間奏で熱い演奏を聴かせるのが、梓のギターソロ。一見爆発しているかのように見えるが、そのなかでも緻密な冷静さを持っているのが梓たるゆえんである。「いちごパフェ」の唯のギターソロと比べると両者のスタイルの違いがよく分かる(参考:2人はギタリスト〜唯と梓の、もしくはギー太とむったんのアンサンブル〜 - 日々の御伽噺)。

ごはんはおかず

 まさか却下された歌詞が曲になるとは……一体誰が予想しただろう。
 放課後ティータイム史上、もっともまじめにふざけた曲であり、もっともパンキッシュな曲。


 もうこの曲は全員で勢い任せの悪ノリで演奏しているとしか思えないほど、かっとんでいる。そこに唯の歌声とコーラスが乗っていくもんだから、なんだこのカオスwと思ってしまうほど。 
 だがしかし、もう少し耳を傾けてみると構成に驚いてしまう。なんというかAメロ、Bメロ、サビ、Cメロとあるのだけど、どれもなめらかに繋がっていると表現すればいいか……特にBメロからサビへ至る箇所はなめらかすぎて、「気がつけばサビ!?」と初回視聴した際に驚いてしまった。


 ここでのギターソロは梓。意外にもここでは抑えた演奏で、徐々にAメロへ高めていくソロを演奏している。梓の演奏の特徴は隙間を埋めていくように、バンドに沿った演奏をするところなのだが、ソロにもそれが現れた印象だ。

ときめきシュガー

 先ほどの「ごはんはおかず」と双璧をなす、まさかまさかの楽曲化。
 歌詞は澪ワールド全開、そしてその音も放課後ティータイム全開のあっという間に駆け抜けて行ってしまう。「ごはんはおかず」が唯ならば、私はこれで!という澪の意気込みであろうか(多分違う)。こんな曲にこの歌詞か……と思うと、むぎの作曲能力に末恐ろしいものを感じる。


 こちらの曲も、イントロから澪のベースがゴリゴリとバンドを引っ張っていくタイプの曲。まず、F#のマイナーペンタ+αで上昇するベースラインが、F#のメジャーペンタで降りてくるフレーズを奏でるギターを導き出すというのが、気持ちいいですね。
 しかし、ほぼどの曲通じても律のドラムがタイトなリズムをきざんでいるので、安定した印象を受けますね。逆に前作のような初々しさ感は若干薄れている気もしますが、バンドの成長とみればむしろよいことなんでしょう。

冬の日

 唯の空間系エフェクトがかかったイントロのギターが印象的な一曲。第1期13話で律を悩ませたあの澪の歌詞も、むぎの手にかかればこのとおり。愛らしく淡い日差しの中で冬の吐息が聞こえてきそうな楽曲に仕上がっております。


 ここでの唯ボーカルはなんだか、明るいけどどこか切ない。それにコーラスを付ける澪の声がまたいいですねぇ。曲全体はシャッフルで跳ねたリズムなんですけど、そこに「いちごパフェ」や「ごはんはおかず」とはまた違った唯の歌声が乗ってくると、引き締まった印象を受けます。


 さて、この曲をここに置いたということは次の曲への助走なんでしょうね。
 

U&I

 唯から憂への感謝。そして、周りのものに対するありがとう。
 おそらくいくつもの言及はあるでしょうが、U&Iはそういう曲でしょう。
 
 
 演奏的にはやはり、梓が通してリードギターを担当して、唯がリズムに回っているところがキモでしょう。Aメロはいつも通りの梓のカッティングだったりするのですが、イントロのフレーズなど目立つギターの音はほぼ梓担当。
 ただ実際の間奏は2人のツインリードになっていてます。ぴったりと息のあった音は唯と梓の絆を思ってちょっとほろりときたり……後、よくよく耳を凝らして聴いてほしいのは、2人のツインリードにむぎのオルガンが同じフレーズを弾いているところ。他にもむぎのオルガンはギターと同じフレーズを弾いているところがあり、音に厚みを加えてくれます。このあたり、実にむぎらしいと思いませんか。

天使にふれたよ!

 このアルバム「放課後ティータイムII」中でもっともトリックも、細かいネタも少なくそしてストレートな「終わりの曲」。「U&I」も「天使にふれたよ!」も誰か(憂/梓)に対するメッセージを持つという点は同じだ。
 ただ個人的には「天使にふれたよ!」は、梓に対するメッセージだけでなく、桜高軽音部として過ごした5人の時間に対するメッセージ、という彼女たちの歌なんだと思う。そして自分たちを結びつけてくれた音楽に対するラブソングにも聴こえる。この子達はほんとに音楽を好きでいてくれたんだ。

とびきりの夢と出会いくれた 音楽にありがとう

天使にふれたよ!歌詞より


 ドラムスティックの乾いたカウント音から、オルガンのグリッサンドで始まるこの曲は、先ほども述べたとおり非常にストレートな曲だ。最終話と違い、梓のギターも含めた(右チャンネル)完全版。ほんとにいい曲だと思う。

Interlude

 ボーナストラック。
 「天使にふれたよ!」は「終わりの曲」だが、同時に次への扉を開く曲でもある。その証拠にこのInterludeでは彼女たちの歩みが終わったわけではないことを示している。
 「ふわふわ時間」を元にしたジャムセッションが流れるが、なにせ「ふわふわ時間」は放課後ティータイムとして「始まりの曲」。ここでアルバムが終わるのはとても意味深だ。

放課後ティータイム

 ボーナストラック。
 「Interlude」もボーナストラックではあるけど、個人的にはInterludeまでがアルバム曲だと思う。

 
 まさしく放課後ティータイムのテーマソング。ああもう、歌詞がいいなぁおい。

全体を通して

 冒頭でも述べたけど、何度聴いても飽きない。楽曲そのもののレベルが高いし、そのアレンジも細かく聴き出すといろいろな発見があって面白い。
 何より、自分が思わずギターを手に取りたくなるアルバムというのは(実際に聴きながら弾いていたりしますが)、ここ最近なかった。それがやたらとリピートしている理由かなと思います。


 さて、CassetteMix編はまたそのうちに。